summer_salt’s blog

日記、自分のことなど記録します。

2023/5/22 『息吹』デッド・チャン

7つの短編集。「予期される未来」「偽りのない真実、偽りのない気持ち」「不安は自由のめまい」が面白いと感じた。

・予期される未来

 予言機が発明された世界。LEDが1秒後にスイッチが押されるかどうかを判定する。人間には自由意思がないことを示唆する。自由に選択したものが何一つなかった決定論的世界であっても人間は自由意志があるようにふるまうより仕方がない。たとえそうでないことを知っていても自分の決断に意味があるかのようにふるまうことが最も重要だ。現実がどうではなく重要なのは何を信じるのかである。

 

・偽りのない真実、偽りのない気持ち

 すべての経験がデジタル化されて記録される技術がある世界での親子と未開の土地で文字を覚え、記録することのテクノロジーを学んでいく少年が並行して語られる。

 前者ではよき父親になったつもりが記憶を改善してしまっていたことをリメンによって事実を再認識する。完全な記録はトラブル時の人間関係の破綻や温かい記憶の消失を起こすのかそれとも互いに寛容する行動様式に変化するのか。時間の経過とともに恥ずかしさや怒りや悲しみを洗い流してきたかつて心理機能を無視し、忘れることのできないものにしてしまうのではないのか。過ちを認め自信を再評価し、他人にかんようになる?

 後者では記録に残すテクノロジーを学ぶことで客観的な正しさと主観的な正しさのジレンマに陥る村を紛争にさせない正しさと正当な血筋の家督を決める正しさではどちらを選択が正しいのか?口承はよいもの?

 結局現代社会に生きている私たちにとって記録するテクノロジーに頼らざるを得ない。

 

・不安は自由のめまい

 とある時点で時間軸の分岐を作り、あるかもしれなかった自分と通信できる技術がある世界。自分の行動様式が悪い方向に行く世界戦もあればよい方向に行く世界戦もある。では本来の自分の人間性とはどうなのか。他の世界戦が善良であれば自身も善良であると安心できるのか、また逆か。

 より選択をし続けることですべての分岐の選択に寄与する。よりよい選択をすれば未来において利己的な選択をする確率は低くなる。人間性とはそういった日々の選択の積み重ねなのかもしれない。過去の枝分かれした悪しき分岐はもうこれからの行動に影響しないがそこで良い選択をすることは未来に生じる分岐に影響する。

 多次元世界は自身の道徳性や人間性を打ち消してしまう?

 時間をかけて人間性は構築される、私たちの決断すべては打ち消されない。